Ubiquitous Learning Architecture For Next Genaration

コラム

北米の大学おけるオープンソースソフトウェアによる情報基盤整備の現状(2)

[2005年07月05日]

2.1 ポータルソフトウェア・CMS の独自開発を行っている機関

2.1.1 CHEF

CHEF は,ミシガン大学メディアユニオンが開発しているシステムで,大学における教育・研究を支援するための基盤ソフトウェアである.CHEF の前のコースツールの利用が進んだ結果,アナバーキャンパスの約39,000 の学生,約5,000 の教員のうち,約33,000の学生,教員の75%が使用する状態まで至った.しかしながら,コースツールはロータスドミノ上に作成されていたため,プログラミングができる技術者を見つけることが難しく,新しい機能や機能強化に迅速に対応することが困難であるという問題を抱えていた.このため,オープンソースや標準規格に則ったシステムを開発することを提案し,独自の資金を使ってCHEF の開発が進められた.

2.1.2 uPortal

uPortal は,高等教育機関用のポータルを作成するためのフレームワークで,Java クラスのセットおよびXML/XSL ドキュメントで構成される.uPortal は,JA-SIG のメンバである大学・企業の開発者がコミュニティ・デベロプメントの考え方で開発を行っており,無償のリファレンスインプリメンテーションとしてuPortal コードが利用可能になっている.uPortal プロジェクトは米国のソフトウェア開発業界において高く評価されており,InfoWorld トップ100 のうち,トップ4 に選ばれている.また,uPortal は,2000 年にメロン財団から約70 万ドルの資金援助を受けるとともに,コロンビア大学,コーネル大学,エール大学,ニューファンドランド記念大学やIBS-UNICON 社,SCT 社からも開発要員が提供され,総額約300 万ドルのプロジェクトと推定されている.

2.1.3 OSPI

OSPI は,学生のレポート,試験の結果など学生の学習活動履歴を取り扱うポートフォリオをオープンソースで開発するプロジェクトで,ミネソタ大学で開発されたeポートフォリオが元になっている.ポートフォリオに関する要求が2003 年から強まりつつあるが,その背景には,各大学の教育プログラムの評価のためにポートフォリオを活用することへの期待がある.eポートフォリオは学生が宿題や演習で要求される課題等を電子的に蓄積し,様々な用途として用いるものである.これらは,(1) テストや課題などに関して,フィードバックを教師から学生に伝えるとともに,そのコメントに対するフィードバックを学生から得るための基盤,(2) 大学教師が自身の教材等を蓄積し,再利用を促すための基盤,(3) 学生の授業への課題提出履歴等を通して,授業評価を実施するための基礎的な統計データを得るための基盤,(4) 卒業後にも利用しうる自己啓発のための基盤である.ロードアイランド大学ほかいくつかの大学では,すでにオープンソースとして開発されたOSPI1.0 を利用してサービスが開始されている.OSPI は,2003 年6 月から9 月の4ヶ月間にメロン財団から計画のための資金提供(5 万ドル)を受けた後,2003 年12 月に本プロジェクトが採択された(助成金額は50 万ドル).

2.1.4 LON-CAPA

LON-CAPA は,92 年からはじまった物理学を中心としたオンライン教育に関する様々な取り組み(Computer-Assisted Personalized Approach,CAPA, コンピュータ支援・個人化アプローチ)を通じて得られた(1) オンライン教材の配信,および,(2) 個人化されたアセスメントシステムでの成功をもとに,複数の大学間での利用も可能な分散プラットフォームとして拡張し,学部・大学・企業活動などのさまざまなグループ単位で,共通のリソースをオンラインで共有できるようにし,これをもって,教育リソースに関するオンラインコミュニティを構築することを目指している.ミシガン州立大学の独自資金によりすでに開発が開始されていたLON-CAPA をベースに,リソース共有コミュニティの形成等に関する研究課題に対して,NSF からの研究助成を得た.LON-CAPA は2000 年から5 年間NSF により研究助成がなされており,研究費は5 年間で約200 万ドルである.主な開発は,ミシガン州立大学自然科学部の教育テクノロジ研究所(Laboratory for Instructional Technology in Education) において,10 名のコア開発チームにより行われている.

2.1.5 関連動向

CHEF とOSPI が,Sakai プロジェクトにおいてuPortal を用いて大学ポータルに統合化される方向で検討されている.Sakai プロジェクトでは, OKI が達成した成果をもとに,ミシガン大学が独自のシステムとして開発してきたCMS であるCHEF,MIT のStellar,インディアナ大学のOnCourse,スタンフォード大学のCourseWorks のそれぞれベストなところを,JSR-168 というPortlet 標準規格に準拠したuPortal 3.0 を使って融合する点にある.そして,2005 年夏を目標に,5 つの大学が時を同じくして現在個別に開発しているCMS をすべてSakai に置きかえ,全学的な運用を開始することを目指すことになる.このように現在の情報基盤整備は,機能モジュール単位でのポータル統合化の方向へ向かっていると言える(図B.1 参照) .



図B.1: システム単位での統合から各システムの機能モジュール単位での大学ポータルへの統合が進む.